鎌倉もののふ風土記-鎌倉の祭りと行事

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祭りと行事

鎌倉で行われる法会や神事・観光行事には、京都のように全国的な規模で多くの人を集める絢爛豪華なものはほとんどありません。
しかしながら、鎌倉の象徴・鶴岡八幡宮や鎌倉五山第一位の建長寺を中心に、驚くほどたくさんの興味深い行事が1年を通して途切れることのないほど催されています。
規模とは別に、古くは源頼朝の時代に起源をもつ古式ゆかしい行事も数多くあり、それぞれの行事がもっている本来の意味を多少でも知っていれば、観光イベントという色彩があまりないだけに、かえって純粋に武家の古都の雰囲気が感じられます。
歴史の町鎌倉がもっている多面的な魅力の1つとして、ぜひ注目してみたいです。

月日
行事名
場所
詳細
1月1日 万灯供養 長谷寺 新年を迎え奉納されたロウソクに火を灯し読経します。
1月1日 神楽始式 鶴岡八幡宮 新年を迎え舞殿で、地元小学生による「八乙女の舞」が奉仕されます。
1月1~3日 初えびす 本覚寺 えびす神の年はじめの祭りです。商売繁盛を祈願する福笹が授与されます。
1月1~6日 御判行事 鶴岡八幡宮 神印を参拝者の額に圧しあてて、病気平癒・厄除け・無病息災を祈念します。
1月2日 船おろし 坂ノ下海岸 坂ノ下の漁師による仕事はじめです。大漁と航海安全の祈願です。
1月4日 船祝い 腰越漁港 腰越の漁師による仕事はじめです。大漁と航海安全の祈願です。
1月4日 手斧始式 鶴岡八幡宮 建築関係者の事始です。手斧や槍かんななどで古式ゆかしい建築の所作が奉じられます。
1月5日 除魔神事 鶴岡八幡宮 鎌倉時代からつづく武士の事始の儀式です。裏に「鬼」の文字が書かれた大的を弓矢で射て邪を祓います。
1月8日 大注連祭 白山神社 毘沙門天のつかいといわれるハガチ(百足)を模した大注連縄を奉納し、豊作と村内安全を祈願します。
1月10日 本えびす 本覚寺 商売繁盛の神えびす神の祭りです。烏帽子をつけた福娘が福餅や福銭・御神酒を振る舞います。
1月11日 潮神楽 材木座海岸 海神を鎮め、航海の安全・豊漁を祈願し神楽を奉納します。
1月11日 汐まつり 坂ノ下海岸 海神を鎮め、航海の安全・豊漁を祈願し神楽を奉納します。
年初の巳の日 初巳祭 銭洗弁財天
宇賀福神社
新年の最初の巳の日に行われます。商売繁盛のご利益で知られるため、商業関係者の参拝が多いです。
1月13日 白旗神社例祭 白旗神社 源頼朝の持仏堂跡に建つ白旗神社の例祭です。
1月13日 護摩焚き供養 虚空蔵堂 虚空蔵菩薩が開帳され、僧侶が護摩を焚き読経します。5月13日・9月13日にも行われます。
成人の日 成人祭 鶴岡八幡宮 新成人が舞殿で無事成長できたことを感謝し、大人としての責任を果たすことを誓う祭りです。
1月15日 左義長神事 鶴岡八幡宮ほか 返納された門松・注連縄・古神札などを集め積み重ねて焼納します。一般に「どんど焼き」と呼ばれる火祭りです。
1月16日 閻魔縁日 圓應寺(円応寺) 地獄の釜のふたが開き、すべての餓鬼が解放される日です。8月16日にも行われます。「水施餓鬼」とも呼ばれます。
1月22日 聖徳太子講 宝戒寺 鎌倉市内の建築関係者・植木屋・石屋などを営む人たちが集まり、護摩供養・読経し、木遣唄などが奉納されます。
1月25日 初天神(筆供養) 荏柄天神社 祭神の菅原道真は学問の神です。学問・書道の向上を祈願するため、古筆などを焚きあげて供養します。
1月25日 文殊祭 常楽寺 智恵の仏といわれる文殊菩薩を供養します。この日は秘仏の木造文殊菩薩坐像が開帳され法会が行われます。
1月28日 初不動 明王院 鎌倉幕府の鬼門除けの不動明王です。無病息災や交通安全を祈り護摩焚き供養が毎月28日に行われます。
立春の前日 節分祭・節分会 各寺社 立春の前日、邪気の訪れを防ぎ旧年中の穢れを祓います。直垂や裃姿の年男・年女が福豆をまいて、参詣者に福を授けます。
2月初午の日 初午祭 丸山稲荷社(鶴岡八幡宮)・佐助稲荷神社 春の農作業開始を前に農業神の稲荷の大神に豊作を祈願さます。
2月8日 針供養 荏柄天神社 使い古した針に労いと感謝を込めて、拝殿前の三方の上に置かれた豆腐に針を刺して供養します。
2月11日 大國禱会成満祭 長勝寺 千葉県の法華経寺で百日の荒行を終えた修行僧が立正安国を祈願し、境内で冷水を浴びて寒中荒行を奉じます。
2月15日 涅槃会 各寺 釈迦の入滅日に遺徳をしのぶ法会です。
2月17日 祈年祭 鶴岡八幡宮 五穀豊穣を祈願する祭りです。
3月下旬 動物慰霊祭 光則寺 境内の動物埋葬塚で犬や猫などペットとして飼われた動物の彼岸供養法要を行います。9月下旬にも行われます。
春分の日を中日とした7日間 彼岸会 各寺 春の彼岸の7日間に行う仏事です。『吾妻鏡』には鶴岡八幡宮で放生会を行い、その間、東国一帯で殺生を禁じたことが記されています。
3月最終の土曜または日曜 献詠披講式 鶴岡八幡宮 神前に和歌を献詠する古式ゆかしい神事です。
4月3日 若宮例祭 若宮(鶴岡八幡宮) 京都石清水八幡宮の神を源氏の氏神として勧請した最初の場所である若宮の例祭です。
4月4日 開基毎歳忌 円覚寺塔頭佛日庵 円覚寺を建立した8代執権北條時宗の命日に行われる法要です。管長が導師となり、一山の僧侶で半斎式をあげます。
4月7~9日 極楽寺本尊開扉 極楽寺 秘仏の清凉寺式釈迦如来立像を特別開扉します。
4月8日 忍性墓特別公開 極楽寺 奥ノ院にある開山の墓・忍性塔を公開します。この塔は高さおよそ3.9mの五輪塔です。国の重要文化財に指定されています。
4月8日 降誕会 各寺 釈迦の誕生を祝う法会です。
4月第2日曜~第3日曜 鎌倉まつり 鶴岡八幡宮ほか 13日には源頼朝公墓前祭も行われます。前後の日曜日から8日間、初日に静の舞、最終日に流鏑馬が奉納されます。
4月第2日曜 パレード 若宮大路 鎌倉市内各所の神輿やブラスバンドがパレードです。
4月第2日曜 静の舞 鶴岡八幡宮舞殿 吉野山での源義経との別れの悲しみを訴えた静の舞にちなみ、舞殿で奉納されます。
4月13日 源頼朝公墓前祭 源頼朝墓前 源頼朝の墓前で行う供養です。
4月第3土曜 義経まつり 満福寺 源義経の遺徳をしのぶ法会ののち、腰越商店街をパレードします。
4月第3日曜 流鏑馬 鶴岡八幡宮 武家の古都に相応しい装束で馬上から三的を射ます。
5月5日 菖蒲祭 鶴岡八幡宮 かつて武士に大切にされた「尚武」にちなんで菖蒲を使い、男子が健やかに育つよう祈願します。舞殿で舞楽が奉納されます。
5月5日 草鹿 鎌倉宮 鎌倉時代の武士の射術鍛錬とされ、鹿のかたちをした的に向かって矢を放ちます。
5月5日 清正公祭 妙法寺 加藤清正像の祀られた大覚殿で法要が行われます。そののちお守りが配られます。
5月22日 徳崇権現会 宝戒寺 北條一族を供養し弔います。
5月中旬土曜・日曜 かまくらビーチフェスタ 由比ヶ浜海岸 フラダンスやライブなどが行われ、模擬店も出店する海浜の祭りです。砂像づくりを体験できるイベントもあります。
5月第3日曜 秋葉山三尺坊大権現例祭 秋葉権現(光明寺) 防災の神様として古くから信仰されています。かつては、山伏姿の修験道行者による火渡り神事が行われました。
5月28日 白旗神社例祭 白旗神社(鶴岡八幡宮) 源頼朝源実朝を祭神とする白旗神社の例祭です。
6月上旬 蛍放生祭 鶴岡八幡宮 境内の柳原神池のほとりで神職により蛍が放生され、そののち境内が夜間開放されます。
6月3日 葛原岡神社例祭 葛原岡神社 日野俊基が祀られています。神輿は第1日曜に出て、氏子が由比ヶ浜・佐助一帯をまわります。
6月第2日曜 五所神社例祭 五所神社 材木座の氏神として町内の5つの神社を併せて祀ったことから五所神社といいます。町内を神輿が練り歩き、海上渡御が行われます。
6月16日 河村瑞賢供養 建長寺 江戸時代初期の土木事業家です。建長寺の裏に別荘をもっていたことや禅への信仰が深かったことから、墓前で法要が行われます。
6月30日 大祓式 鶴岡八幡宮・鎌倉宮 正月から半年間の罪や穢れを祓い清め無病息災を祈念します。鶴岡八幡宮では、舞殿前に設けられた大きな茅の輪をくぐります。
7月1日 海開き 由比ヶ浜海岸ほか 海岸に祭壇を設け、神職によるお祓いののち、巫女による舞が奉納されます。
7月7日 七夕祭 鶴岡八幡宮 京都冷泉家の儀式にならい、舞殿に五色の絹糸や絹布・梶の葉などが供えられます。
7月5~12日の間の土曜・日曜 八坂大神例祭 八坂大神 初日に宵宮祭を行い、翌日の例祭には神楽が奉納されます。
7月7~14日の間の土曜から3日間 八雲神社例祭(大町まつり) 八雲神社 初日に神輿渡御です。この神輿を拝観すると疫病も退散するといわれます。
7月中旬の日曜日 天王祭 腰越町全体 8日間にわたり、江ノ島の八坂神社と腰越の小動神社とで同時開催されます。最終日には、八坂神社の神輿が海上渡御を行ったのち、小動神社下にて式典が開かれる行合祭です。
7月中旬の1週間 八雲神社例祭 八雲神社 神輿渡御は「行合祭」と呼ばれ、神輿は建長寺・円覚寺・浄智寺ほかにて読経を受けつつ神幸したのち、山崎の八雲神社の神輿と合流し、行合神事を行います。
7月15日 三門梶原施餓鬼会 建長寺 三門(山門)の下で早朝から行われる施餓鬼会ののち、梶原景時の慰霊のため、再度、施餓鬼会が行われます。
海の日 石上神社例祭 御霊神社 海上の完全祈願をする神事です。神輿を船に乗せ、海上で御供を渡します。
7月24日 地蔵尊大祭 宝戒寺 本尊の地蔵菩薩の縁日に施餓鬼法要が行われます。
7月25日 荏柄天神社例祭 荏柄天神社 年に1度の祭典です。例祭の数日前には神輿の出る神輿祭が、前日には宵宮祭が行われます。神輿は元禄5年(1692年)に造られたものです。
7月下旬 献灯会 光明寺 境内に提灯が立ち並び、夜になると先祖供養として献灯がなされます。法要では水難者の供養も行われます。
7月下旬 鎌倉花火大会 由比ヶ浜・材木座海岸 昭和24年(1949年)からはじめられた海岸での花火大会です。およそ2,900発の花火があがります。特に綺麗な水中花火が有名です。
立秋前日~9日 ぼんぼり祭 鶴岡八幡宮 鎌倉在住の文化人の書画をぼんぼりに仕立てて、境内の参道に飾り、夕暮れとともに点火します。夏の風物詩です。
立秋前日 夏越祭 鶴岡八幡宮 夏の邪気を祓うため、源平池ほとりの神事のあと、茅の輪くぐりを行って無病息災を祈願します。
立秋の日 立秋祭 鶴岡八幡宮 二十四節気の1つです。夏の間の無事を感謝し、実りの秋の訪れを奉告します。神前には神域で生育した鈴虫が供えられます。
8月9日 実朝祭 白旗神社(鶴岡八幡宮) 鎌倉幕府3代将軍で和歌に長けた源実朝をしのびます。献茶・短歌・俳句の会を開催します。
8月10日 黒地蔵縁日 覚園寺 覚園寺の黒地蔵尊(国重文)の縁日です。午前0時から正午まで参拝できます。
8月10日 四万六千日 杉本寺・長谷寺・安養院ほか 観音菩薩を参詣する縁日です。この日に参詣すると46,000日間参詣したのと同じご利益を授かるといわれ、観音霊場を順にまわる習わしがあります。
8月19日 玉縄史蹟まつり 岡本郵便局手前の首塚 玉縄城主北條氏時が築いた首塚を供養する祭りです。玉縄史蹟顕彰会が主催し、灯籠流しも行われます。
8月20日 鎌倉宮例祭 鎌倉宮 19日に前夜祭、20日に例祭、21日に後鎮祭が行われます。琵琶・詩吟の奉納、剣道・柔道の奉納、納涼踊りのほか、楽市や子ども神輿、お囃子が開かれます。
8月23日・24日 開山忌 建長寺 開山蘭渓道隆(大覚禅師)の坐像を法堂に遷し、法要を行います。24日には、10万人講施餓鬼会が行われます。
9月第1土曜・日曜 十二所神社例祭 十二所神社 氏子連や子ども会、婦人会など地域の組織が世話をし、普段は静かな境内がにぎわいます。
9月12日 龍口法難会(ぼたもち供養) 常栄寺 日蓮が龍ノ口に引かれていくとき、桟敷尼がゴマのぼたもちを差し上げたことから、この日に日蓮像にぼたもちを供えて参詣の人々にも供します。
9月14~16日 鶴岡八幡宮例大祭 鶴岡八幡宮 14日には、海中に入って身を清める浜隆式・宵宮祭、16日に流鏑馬神事を行います。
9月14日 甘縄神明神社例祭 甘縄神明神社 長谷町内各所に御神酒所が用意され、夕方には祭り囃子が開かれます。神輿は14日に近い日曜、山車とともに長谷をまわります。
9月18日 御霊神社例祭 坂ノ下御霊神社 湯立神楽ののち、面掛行列が行われます。伎楽面や田楽面をつけた面掛10人衆が坂ノ下を練り歩きます。神奈川県指定無形民俗文化財です。
秋分の日を中日とした7日間 彼岸会 各寺 秋の彼岸に行われる先祖を供養する法会です。
10月3日 開山忌 円覚寺 開山無学祖元(仏光国師)忌です。宋朝様式の古式ゆかしい法会が行われます。
10月上旬 鎌倉薪能 鎌倉宮 昭和34年(1959年)より鎌倉市観光協会主催ではじまった行事です。境内に特設能舞台を設け、夕暮れから篝火を焚いて行われる能です。有料となります。
10月第1日曜 人形供養 本覚寺 古くなった人形や玩具などを集めて供養し炊き上げます。受付期間は9月1~30日です。
10月中旬 鎌倉郷土芸能大会 鎌倉市生涯学習センターほか、年により変更 民俗芸能など伝統文化の保存と育成のために行われてきました。鎌倉神楽・田植え唄・祭り囃子など郷土芸能大会です。
10月15日 舎利講式 円覚寺 舎利殿に納めてある仏舎利を方丈に移し、法要を営みます。
10月12~15日 十夜法要 光明寺 浄土宗の信徒が集まり、夜を徹して本堂で念仏や御詠歌を唱える念仏会です。境内には露店が並びます。
10月28日 白旗神社文墨祭 白旗神社(鶴岡八幡宮) 3代将軍で歌人としても知られた源実朝の文徳をしのび、俳句会・歌会・茶会・書画奉納展覧会が催されます。
11月3日を含む3日間 宝物風入れ 建長寺・円覚寺 文化の日を含む3日間、虫干しを兼ねて寺所蔵の貴重な古書画・仏像などの寺宝が有料公開されます。
11月8日 丸山稲荷社火焚祭 丸山稲荷社(鶴岡八幡宮) 五穀豊穣を感謝し、社殿の前で来年の豊作を祈願します。鎌倉神楽を奉納します。
11月15日 七五三祈請祭 鶴岡八幡宮・鎌倉宮ほか 男子3歳・5歳、女子3歳・7歳に氏神に詣でて成長を祝う七五三の宮参り祭事です。
12月16日 御鎮座記念祭 鶴岡八幡宮 舞殿北庭に篝火が焚かれ、4人の巫女による「宮人曲」にあわせた舞や神職による「人長舞」が奉納されます。
12月18日 歳の市 長谷寺 参道に露店が並び達磨や熊手など正月を迎えるための縁起物が売られる鎌倉唯一の歳の市です。
12月31日 大祓式 鶴岡八幡宮・鎌倉宮 1年の罪や穢れを清め祓う神事です。
12月31日 除夜の鐘 各寺 鐘を108鳴らして1年間の煩悩を祓い、新年を迎えます。

1月

1月1~3日
初えびす(本覚寺)
本覚寺では正月元旦から3日まで、初えびすが行われます。
えびす神は源頼朝により幕府の守神として祀られたといわれます。
現在ではえびす神は、商売の神様といわれ、年初の初えびすは特に参拝者が多いです。
福娘から福銭や福笹・御神酒の振る舞いがあります。
また、10日には本えびすが行われ、境内では福娘により福餅がつかれます。

1月2日
船おろし(坂ノ下海岸)
坂ノ下の漁師による仕事はじめの行事です。
大漁旗を掲げた漁船が海岸に集結し、船内に祀られた船霊に御神酒を供え、昨年の漁の無事に感謝し、この1年の豊漁と安全を祈願します。
船主が船の上から日ごろの感謝を込めて船霊に祈念し、ミカンなどをまきます。
腰越漁港でも1月4日に船祝いが行われます。

1月1~4日
手斧始式(鶴岡八幡宮)
建久2年(1191年)の大火で焼けた社殿を源頼朝が再建するとき、船から上げられた用材を由比ヶ浜より運んで木造りしたという御柱引きの故事にちなむ神事です。
古儀保存の意味と、年間を通して行われる営繕の事始の儀式として、さらには鎌倉全市の大工や鳶職など建築関係者の工事始の式としての意味も加わって営まれています。
二の鳥居より段葛を神職の先導のもとに鳶職が木遣唄も勇ましくご神木を運ぶところから神事は始まり、舞殿前では烏帽子直垂姿の幣振役・工匠・鋸役・墨打役・手斧役・槍かんな役がそれぞれ現在では目にふれる機会の少ない所作を古式ゆかしく再現します。

1月5日
除魔神事(鶴岡八幡宮)
源頼朝が幕府において「御的始」「御弓始」と称して行った武家の事始を起源とする鎌倉時代からつづく武士の新年行事で、同時に年中の除魔を目的とした行事です。
直径5尺2寸(1.56m)の大的の裏に「鬼」という字を封じ込めて矢を射ることから「大的式」とも呼ばれます。
烏帽子に直垂姿の射手6人が2人ずつ順番に矢を射ます。

1月15日
左義長神事(鶴岡八幡宮・鎌倉宮ほか)
1年のはじめにあたり、穢れを祓い清めて、暖かい春の到来と今年の豊かな収穫を祈る火祭りです。
牛来より日本全国で行われ、地方によって「どんど焼き」や「さいと焼き」と呼ばれています。
神社に納められた門松、注連縄古神礼などを積み重ねて祭典を執り行い、浄火で焚きあげます。

1月25日
初天神(筆供養)(荏柄天神社)
祭神の菅原道真にちなんではじまった行事です。
書家や歌人をはじめ一般の参拝者が持ち寄った愛用の古い筆や鉛筆を本殿前に供えて焚きあげ、供養して、学問や書道の上達を願います。
2月8日には針供養も行われます。

2月

2月(立春の前日)
節分祭(鶴岡八幡宮・建長寺・長谷寺・鎌倉宮ほか)
立春の前日、直垂や裃姿の年男・年女が福豆をまき、参詣者に福を分け与えます。
鶴岡八幡宮では、豆まきに先立ち、衣冠装束に身を正した神職が、矢をつがえていない弓の弦を鳴らし、その音で魔を祓う鳴弦式が行われます。
建長寺では、豆まきに先立ち方丈で大般若心経転読会が行われ、かっぽれの奉納もあります。
長谷寺では、力士や有名人による豆まきが行われます。
鎌倉宮では、豆まきに先立ち拝殿で鐘や太鼓を打ち鳴らして鬼を祓う鬼やらいが行われます。
1日には大船観音寺でも行われます。

2月11日
大國禱会成満祭(長勝寺)
前年の11月から千葉県の法華経寺の道場にこもり100日の間「寒の荒行」を積んできた修行僧が、最後の水行で満了を示します。
白い行者姿の僧がうちわ太鼓に導かれて水行場に向かい、裸になって寒風のなか大声で経文を唱えながら頭から水をかぶり、国の安泰、世界の平和を祈念します。

2月15日
涅槃会(各寺)
仏教の主要法会の1つで、釈迦の入滅の日に行われる追善報恩の法会です。
建長寺では法堂の前に涅槃図を掲げ、一山の僧侶が集まり読経を行います。

3月

最終の土曜または日曜
献詠披講式(鶴岡八幡宮)
平安時代より宮中に伝わってきた古式ゆかしい行事で、鎌倉時代にも源頼朝が管弦詩歌の儀を行ったという故事をもとに、平成17年(2005年)より神前に和歌を献詠する神事として執り行われ、直垂に引立烏帽子の神職が、読師・講師・発声・講頌の諸役をつとめます。
披講とは詩歌に曲節をつけて詠みあげることで、本来、和歌は披講することを前提としているので、講師が節をつけずに詠み上げた後、発声の指導によって講頌が唱和します。

4月

4月8日
降誕会(各寺)
主要法会の1つで、灌仏会・仏誕会・仏生会などともいい、釈迦の誕生を祝います。
一般には花祭りの名で親しまれています。
花御堂のなかに甘茶を入れた水盤を置き、中央に安置した釈迦像に甘茶をかけて入浴させます。
釈迦が誕生したときに、天から龍がくだり、香湯のなかへ入浴させたという言い伝えがルーツとなっています。
建長寺では、一山の僧侶が法堂に集い、中国宋様式の法要が行われます。
また、長谷寺では観音堂横のサクラの木の下に花御堂をしつらえて行われます。
鎌倉仏教会主催の法要は、鎌倉市内寺院のもちまわりです。

4月第2日曜~第3日曜
鎌倉まつり(鶴岡八幡宮ほか)
鎌倉市観光協会主催で、昭和34年(1959年)からつづいている鎌倉を代表する観光行事です。
初日には、若宮大路で鎌倉市内各所の神輿やブラスバンドなどが参加するパレードと、鶴岡八幡宮舞殿で静の舞が行われ、最終日には勇壮な流鏑馬が行われます。
静の舞は、源義経の愛妾静御前源頼朝に所望され、鶴岡八幡宮若宮回廊で「よしの山みねの白雪ふみ分けて入りにし人のあとぞこいしき」「しづやしづしづのをだまきくりかえし昔を今になすよしもがな」と舞った故事を古式ゆかしく再現します。

5月

5月5日
菖蒲祭(鶴岡八幡宮)
3月3日の女児の雛祭りと並び、「端午の節句」「菖蒲の節句」といわれる主として男児の祝い日です。
宮中では古くより競馬・騎射などが行われ、節会も盛んに催されていました。
また、昔は尚武祭ともいい、武芸の奨励もされるようになりました。
まず、舞殿で祭典が執行され、つづいて舞楽が奉納されます。
鶴岡八幡宮舞楽の歴史は古く、鎌倉時代にまでさかのぼります。
当時の舞楽面が今も残されており、国重文です。

5月5日
草鹿(鎌倉宮)
建久5年(1194年)、源頼朝が富士の裾野で巻狩を催したとき、草を束ねて鹿のかたちをつくり、稽古したのが起源です。
5人ずつ2組に分かれた射手が、古式にのっとり鹿のかたちをした的を射て、組ごとの合計点数を競う神事です。
勝ち組の大将には神職から菖蒲が授与されます。

6月

6月上旬
蛍放生祭(鶴岡八幡宮)
蛍の生育と放生を通じて豊かな四季と生命の尊さを思い、そのなかで生きることを神々に感謝する祭です。
当日は夕刻より舞殿で神事が行われ、蛍が神前に供えられます。
その後、柳原神池の畔で、宮司以下神職の手によって蛍が放たれ、境内に飛び立ちます。

6月30日
大祓式(鶴岡八幡宮・鎌倉宮)
日常生活で、知らずに犯した罪や穢れを「大祓」により祓い去り、活力を失った心身に生気を甦らせるための神事です。
人形に息を吹きかけ身体をなで、この人形を身代わりとしたお祓いもしています。
式後には祭員をはじめ参列者は茅の輪をくぐり「おはらひさん」と呼ばれる輪飾りが希望者に授与されます。
大祓式は大晦日にも行われます。

7月

7月7日
七夕祭(鶴岡八幡宮)
もともとは、一芸の上達を祈る行事で、大陸の乞巧奠と呼ばれる星祭りを移入したものです。
幕末まで宮中では短冊に願いを書いて笹に吊したり、梶の葉に歌を書いて水に浮かべ、書や技芸の上達を星に願ったりしました。
同じようなことが今も京都の冷泉家に伝えられています。
これらを参考に、平成16年(2004年)から新たに催されることになったのが七夕祭です。
舞殿には五色に染められた絹糸や絹布、梶の葉などが供えられます。

7月7~14日の間の土曜から3日間
八雲神社例祭(大町まつり)/八雲神社(大町)
大町八雲神社の例祭で、「大町まつり」として地元住民に親しまれています。
昼は4基ある八雲神社の神輿を白装束(白丁姿)の町衆がかつぎ、天王唄を歌いながら町内を練り歩きます。
夜は神輿に提灯がとりつけられ「神輿ぶり」を披露します。
宵闇のなか、大町四ッ角で4社が連結されて回転する姿は勇壮です。

7月15日
三門梶原施餓鬼会(建長寺)
餓鬼で苦しむ一切の衆生に食物を与えて供養する法会が施餓鬼会です。
建長寺では、三門の下に一山の僧侶が集まり行う施餓鬼会に引き続いて、梶原景時の亡霊を弔うために、もう一度施餓鬼会を行いのがしきたりになっています。

海の日
石上神社例祭(坂ノ下御霊神社)
石上神社は御霊神社の境内社です。
かつて神社前の海中に岩礁があり、海難事故が絶えませんでした。
そこで、岩の一部を引き上げ海難がなくなるように境内に祀りました。
海神を鎮め、海で遭難した人の霊を慰める神事がこの例祭です。
船に乗せられた神輿とともに、神前に供えた御供(赤飯)を捧げながら、若者が岩礁のあった場所まで泳いでいき、海に御供を流すので「御供流し」とも呼ばれています。

7月下旬
鎌倉花火大会(由比ヶ浜・材木座海岸)
昭和24年(1949年)からはじまった花火大会実行委員会主催の行事です。
およそ2,900発の花火が由比ヶ浜沖の台船から打ち上げられます。
なかでも移動する船から海中に投げ入れられ、水上で開く水中花火は人気があります。

8月

立秋の前日から8月9日
ぼんぼり祭(鶴岡八幡宮)
夏越祭にはじまり、立秋祭、実朝祭までの3日間(年によっては4日間)行われます。
鎌倉在住の画家・書家・学者など著名人が揮毫したおよそ400点のぼんぼりが境内に掲揚され、夕刻になると巫女の手によって明かりが灯されます。
夏越祭は源平池ほとりで古式祓神事を行います。
夏から秋への季節の変わり目の時期には古くより祓が行われ、大祓とも似た意味をもっています。
その後、神職は社務所前で茅の輪をくぐり、舞殿に進み神事を執り行います。
翌日の立秋祭は、実りの秋を言祝ぎ、夏の間の無事を感謝する神事です。
鈴虫の虫籠を神前に供え、舞殿において神事を執り行います。
最終日の実朝祭は『金槐和歌集』など文化芸術と縁の深い3代将軍源実朝の誕生日です。
遺徳を顕彰して短歌や俳句・茶道・華道の奉献者たちが多数参列して神事が執行され、神前にはこの祭典のために選ばれた俳句や短歌などが献上されます。

8月10日
黒地蔵縁日(覚園寺)
黒地蔵は、地獄に落ちた罪人にも情を示し、苦しみから助けようと、獄卒に代わって火を焚いたため、黒く煤けたと伝えられる木造の地蔵菩薩立像です。
別名、「火焚き地蔵」ともいわれます。
寺はお盆を前に先祖供養に訪れる参拝者のために午前0時から開門しています。

8月23・24日
開山忌(建長寺)
開山の蘭渓道隆(大覚禅師)は、建長元年(1249年)に5代執権北條時頼が中国の宋から招いた高僧です。
派内の僧侶が集まって宋朝様式の大法要が行われます。
安置されている大覚禅師の坐像が輿に乗せられ、仏殿から法堂に遷されます。
翌日は前日を上回る法要と10万人講施餓鬼会が行われます。
新盆を迎えた家の霊、先祖の霊を慰めるもので、参拝者は早朝から訪れます。
前日の逆回りで禅師の像は法堂から仏堂から仏殿に納められます。

9月

9月14~16日
鶴岡八幡宮例大祭(鶴岡八幡宮)
旧暦の8月15日に行われていた放生会を新暦に換算して開催されます。
初日の早朝、由比ヶ浜で神職全員が海に入り禊ぎをする浜降式が行われ、2日目には本宮で例大祭が執行されたあと、若宮大路で神幸祭と八乙女の舞が行われます。
最終日には小笠原流宗家により流鏑馬神事が奉仕されます。
流鏑馬は、文治3年(1187年)の放生会に奉納したのがはじまりと伝えられます。
武術と弓術をあわせもった最高の武術とされ、平安末期から鎌倉時代に武士の間で盛んに行われていました。
鎌倉時代の狩装束をまとった武者が馬に乗って走りながら、全長およそ260mの馬場道に立てられた三的を次々に射ます。

9月18日
御霊神社例祭(坂ノ下御霊神社)
祭神鎌倉景政(鎌倉五郎)の命日に行われます。
境内で鎌倉神楽とも呼ばれる湯立神楽を奉納したあと、奈良時代から伝わる伎楽面や田楽面をつけた面掛行列が行われます。
面掛10人衆が坂ノ下町内を練り歩き、豊作・豊漁を祈願する行事です。
爺・鬼・異形・鼻長・烏天狗・翁・火吹男・福禄寿・阿亀・女、の順で練り歩きます。
鶴岡八幡宮放生会の面掛行列にならってつくられたといわれ、江戸時代中ごろから行われているといいます。
神奈川県の無形民俗文化財です。

10月

10月3日
開山忌(円覚寺)
開山の無学祖元(仏光国師)は、2度にわたる元の襲来に際して、8代執権北條時宗の相談役だったといわれています。
一山の僧侶が舎利殿に集まり、宋朝様式の古式ゆかしい法会を行います。
このあと、開山像を祀る仏殿でも盛大な法要を営みます。
4年に1度、閏年に開山像を輿に乗せ、境内を巡堂します。

10月上旬
鎌倉薪能(鎌倉宮)
鎌倉市観光協会主催の鎌倉を象徴する行事の1つです。
境内を夕闇が包みはじめると火入れ式が行われ、篝火に浮かび上がるように、能の幽玄な美の世界が繰り広げられます。
平成16年(2004年)から有料化されましたが、全国各地から観覧の申し込みが殺到します。

10月12~15日
十夜法要(光明寺)
10日10夜にわたり本堂で念仏を唱えると、1000年の修行に値するとあわれています。
明応4年(1495年)、後土御門天皇から光明寺に十夜法要が勅許され、これが現在全国の浄土宗の寺院で盛んに行われるもとになったとされています。
現在は三日三晩に短縮され、植木市なども行われ「お十夜」の名で鎌倉市民から親しまれ、夜店がたくさん並び家族連れでにぎわいます。

11月

11月3日を含む3日間
宝物風入れ(建長寺・円覚寺)
古書画や仏像など寺所蔵の貴重な宝物を、年1回虫干しを兼ねて方丈などに展示し、有料で一般に公開します。
日ごろ見ることができない国宝や重要文化財などの寺宝が拝観できるため、例年多くの拝観者がいます。

12月

12月16日
御鎮座記念祭(鶴岡八幡宮)
建久2年(1191年)11月21日、火災により焼失した鶴岡八幡宮を、現在の大臣山の中腹に再建し、社殿に京都石清水八幡宮の神霊を迎える儀式を執り行いました。
このとき京都より招かれた楽人多好方が「宮人曲」を唱えたところ、神感の瑞相があり源頼朝の感激はひとしおであったと伝えられています。
この日を新暦に換算して御鎮座記念祭が執り行われます。
本殿にての祭曲後、境内の明かりがすべて消され浄闇のなか、舞殿北庭に篝火が焚かれます。
この明かりだけのなかで、4人の巫女が「宮人曲」にあわせて舞い、神職による「人長舞」が奉納されます。

12月18日
歳の市(長谷寺)
年の暮れに、正月の贈り物や新年から使う生活用品などを売るために特別に立つ市のことで、かつては鶴岡八幡宮・大船の塩釜神社・腰越方面などでも開かれていました。
現在は長谷寺の歳の市だけとなり、だるま・熊手などの縁起ものをは神じめ、神棚や暦といった正月用品など屋台が立ち並びます。

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