鎌倉もののふ風土記-鎌倉の漁業と農業

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漁業

南にひらかれた海は鎌倉の町に独特の風情をかもし出しています。
海辺の漁の様子は四季折々の風物詩でもあり、漁の安全などを祈る祭事も行われています。
しかし、海岸道路の建設による環境の変化などで沿岸漁業はしだいに衰え、漁獲高は減る一方となっています。
鎌倉の漁業組合は現在、鎌倉漁業協同組合と腰越漁業協同組合の2つで、鎌倉漁協は海面養殖に力を入れており、ワカメの養殖・定置網・刺し網漁業がおもに行われ、腰越漁協では定置網・船びき網、はえなわ漁業・ワカメの養殖などが行われています。
漁船は3トン未満のものが多く、大きな船でも18トンまでです。
ほとんどが沿岸漁業です。
腰越を中心に遊漁船業(釣船)を兼業で行っている漁師もいます。
水揚げされる魚と海産物は、イワシ類・アジ類・サザエ類・サバ類・ワカメ類・カツオ類・タコ類・トビウオ類などです。
鎌倉の名産品ともいわれているシラスの漁は春から冬にかけて行われ、1~3月の間禁漁となっています。
漁業に携わる世帯は、平成21年(2009年)には40世帯で従事者は57人です。

鎌倉のカツオ

14世紀に著された『徒然草』に「鎌倉の海で揚がるかつおという魚は、昔はたいした魚でもなかったのに、このごろは上等な魚になっている」といった内容の記述があります。
鎌倉で獲れるカツオは中世のころから広く知られていたようです。
江戸時代になると、初ガツオといえば鎌倉で獲れたものが江戸で最も人気を集めていました。
「目には青葉山ほととぎすはつ松尾(がつお)」という山口素堂が詠んだ句や、松尾芭蕉の「鎌倉を生きて出でけむ初鰹」などの句でも知られます。
5月に最初に獲れたカツオは、鶴岡八幡宮に奉納されました。
いまでいう高級ブランドで、江戸の人たちのなかには、その日のうちに運ばれてくるのを待ちきれずに、沖に出て鎌倉からくる船を待ちうけ、カツオを高く買いつける人もいたほどだといいます。
小型定置網による漁法で、現在もソウダガツオなどカツオ類の水揚げ量は上位にランクされます。

鎌倉エビ

江戸時代には、鎌倉沖で獲れるエビは関東近辺だけでなく関西でも「鎌倉エビ」と呼ばれていました。
同様に伊勢で獲れるエビは「伊勢エビ」と呼んでいましたが、鎌倉エビの水揚げ量がめっきり減り、いつの間にか伊勢エビが通称になってしまいました。
ご年輩の市民はいまでも「鎌倉エビ」と珍重しています。
いわばこれも鎌倉ブランドの1つです。
由比ヶ浜の刺し網漁で水揚げされる鎌倉エビは、天然の地元産として貴重です。
年間の水揚げ量はおよそ1トンです。

農業

鎌倉の土地はそれほど肥沃ではないうえ、傾斜地が多く海岸近くの砂地は稲作に適しませんでしたが、明治時代・大正時代は農業に従事する人が最も多かったので、農業用水用の溜め池が散在していました。
いまでも残っているものがあります。
たとえば、散在ヶ池・夫婦池・谷戸池などです。
大正時代以降、しだいに農地が減って住宅地や工業用地に変わっていきました。
戦後実施された農地改革で、多くの地主が土地を手放し自作農が増えましたが、その後の工業の発展によって、東京や横浜などの衛星都市(大都市の周辺にあって、大都市に対し通勤・通学や消費者などの流出が多い、または機能の一部を分担している中小都市)としての鎌倉は、工場誘致や住宅造成などで農地や山林・水田や畑が急激に失われ、農家も激減しました。
大船地区では柏尾川や散在ヶ池などから水を引いて稲作をしていましたが、いまではほとんどが住宅地や工業地となり、耕地は少なくなっています。
畑は少なくなってきましたが、大消費地東京の近郊ということもあり、現在ではトマト・きゅうり・だいこん・ほうれん草など新鮮な野菜の出荷が行われています。
多くはありませんが、花やルッコラ・バジルなど珍しい野菜やハーブ・果実なども扱っている都市型農業です。
平成22年(2010年)のデータによると、農家の戸数は全戸数の0.2%で、耕地率は1.8%となっています。
専業農家は関谷や手広付近に限られ、わずか34戸ですが、生産性の向上に努めています。
最近は特に、有機農法や減農薬栽培野菜が歓迎される傾向があり、鎌倉の場合はつくり手(生産者)の顔の見える野菜として、安全性の確認もでき人気は高まっています。

鎌倉ブランド

野菜を束ねるテープや袋に「鎌倉ブランド」のマークがついていたら、正真正銘の地場野菜です。
平成7年(1995年)から、新鮮で安全な農産物の普及のため表示を行っています。
流通ルートは様々です。
鎌倉市内の小売店や直売所での販売、軽自動車などで地域をまわって売る「引き売り」、秋の収穫まつりや漁業協同組合の直売日、若宮大路沿いの「レンバイ」と呼ばれる鎌倉市農協連即売所では、農家の人が前日に収穫した地場野菜を直接販売しています。
「レンバイ」の市場は、70年以上の歴史があり親しまれています。
地場産は、なんといっても生産者と消費者が近い距離にいるため、新鮮でおいしいです。
鎌倉の野菜畑は、1つの畑に多種類の野菜が植えられていて、「七色畑」といわれるくらい華やかなのが特徴です。


より大きな地図で 鎌倉野菜の市場-鎌倉市農協連即売所「レンバイ」 を表示

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